こんにちは!東京・三軒茶屋の税理士の岩沢です。
前回の記事では、個人事業主への支払いのときの源泉税の計算・納税方法をご紹介しました。
報酬の支払いのときに源泉徴収が必要な取引と、そうでない取引とがあります。
源泉徴収が出来ていなかった場合、追加で税金が発生してしまいますので、しっかり確認しておきましょう。
今回は、役員報酬や従業員に対する給料の支払いのときに天引きする『源泉(所得)税』について、解説します。
目次-Contents-
源泉(所得)税とは?
源泉税は、役員報酬や従業員への給料、個人事業主への支払いの際にあらかじめ天引きする所得税です。
そのため、『源泉所得税』ともいいます。
天引きした源泉税はもちろん会社のものではないので、
決まった期日までに税務署に代わりに納税してあげる必要があります。
計算方法は大きく2つに分かれます。
役員や従業員に給料・賞与を支給するときの「源泉徴収税額表」に基づく計算
個人事業主に報酬を支払うときの税率計算(主に10.21%)
今回は、役員報酬や従業員給料の支払いのときの源泉税の計算・納税方法を主に解説します。
なぜ源泉徴収するのか?
まず、会社員が確定申告をしなくていいようにするという点が挙げられます。
会社は従業員の給料から毎月所得税を天引きし(源泉徴収)、年末の「年末調整」によってその従業員の所得税額を確定させます。
他に医療費控除などの申告がない限り、基本的に従業員は確定申告というわずらわしい作業から解放されます。
これが源泉徴収する理由(と考えられている)の一つです。
もう一つは、国が所得税を取りっぱぐれないようにするためです。
従業員の源泉徴収を不要にし、確定申告して納税させるようにすると、税務署はその受付に膨大な時間・作業が必要となります。
また、年の最後に自分で税を計算して支払うとなると「痛税感」(税金はどうしても払いたくない感情)が増す人が多く、
税金の滞納が予想されるためです。
給料から天引きする所得税はどうやって計算する?
毎月の給料から控除する源泉税は、源泉徴収税額表を使って算出します。
具体的な手順は以下のとおりです。
①非課税給与額を差し引く
給与の中には、通勤手当など所得税のかからない「非課税給与」があります。
総支給額から非課税給与を引き、課税給与額を求めます。
②社会保険料額を差し引く
①で計算した課税給与額から、健康保険料や厚生年金保険料、雇用保険料をさらに差し引きます。
この残りの金額に、所得税がかかることになります。
源泉徴収税額表を見てください。
左の方にある、「その月の社会保険料等控除後の給与等の金額」がこの金額です。
③甲欄か乙欄かを選ぶ
次に、源泉徴収税額表に「甲」と「乙」と記載されています。
どちらであるかによって、天引きする所得税額が異なります。
甲・乙どちらであるかは、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」が従業員から提出されているか、で判断します。
この書類が提出されている場合は「甲」、そうでなければ「乙」です。
2か所以上で働いている場合は、メインの会社のほうにこの書類を提出します。
④控除対象扶養親族等の人数を確認する
「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に記載されている、扶養親族等の人数により源泉徴収税額が変わるしくみとなっています。
控除対象扶養親族とは、自分の生計で養っている配偶者や家族のことです。
【配偶者】
- 所得の見積額が95万円以下(アルバイト収入だけなら額面150万円)
- 青色/白色事業専従者ではない
【配偶者以外の親族】
- 所得の見積額が48万円以下(アルバイト収入だけなら額面103万円)
- 16歳以上
- 里子も含む
なお、乙欄に該当した場合は扶養親族が何人いようと源泉税額は安くなりません。
例を使って長尾景虎さん(仮名)の源泉税額を計算してみましょう。
【例】長尾景虎さん
- 「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出あり
- 総支給額:30万円
- 通勤手当:2万円
- 社会保険料:4万円
- 扶養親族等:妻と17歳の子供ひとり(合計ふたり)
この例の場合、源泉税は以下のように計算します。
課税対象額:30万円-2万円-4万円=24万円
次に、この課税対象額を源泉徴収税額表に当てはめます。
24万円で扶養親族等が2人の条件が交差する2,980円が、長尾景虎さんのこの月の源泉税額となります。
天引きした源泉税はどのように納付する?
これまで解説してきたように、役員報酬や従業員給料の支払いのときは源泉税を天引きしますが、
その翌月10日までに所轄の税務署に納税しなければなりません。
納付方法は以下の3つがあります。
納付書
税務署から送られてくる納付書(所得税徴収高計算書)を使用して、
コンビニや銀行、税務署の窓口で納付する方法です。最も一般的かもしれません。
eTax
インターネット上で税金の手続き・納付が出来ます。
預金口座からの振替(ダイレクト納付)やインターネットバンキング、ATMからの納付が選べます。
ダイレクト納付には、事前に税務署への利用届の提出が必要です。
クレジットカード
国税クレジットカードお支払サイトから納税手続きをします。
ダイレクト納付のような事前登録は不要です。
決済手数料がかかってしまうのがデメリットです。
納付税額 | 決済手数料(税込み) |
1~10,000円 | 83円 |
10,001円~20,000円 | 167円 |
20,001円~30,000円 | 250円 |
30,001円~40,000円 | 334円 |
40,001円~50,000円 | 418円 |
50,001円~ | 以降1万円超ごとに加算 |
源泉税の支払いを半年に1回にするには?
給与の支給人員が常時10人未満の会社・個人事業主は、半年分まとめて納付できる『納期の特例』が認められています。
この特例の対象
・給与や賞与、退職金
・弁護士、税理士、司法書士などへの報酬
納付期限
1~6月源泉徴収分:7月10日
7~12月源泉徴収分:翌1月20日
事前提出書類
この特例を受けるためには、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出することが必要です。
税務署長から納期の特例の申請について却下の通知がない限り、
申請書を提出した月の翌月に源泉徴収する分から、納期の特例の対象になります。
例)納期の特例申請書を提出した月が2月中の場合
・2月支給の給与:3月10日が納期限
・3~6月支給の給与:7月10日が期限(特例の対象になる)
※給与の支給人員が常時10人以上となり、源泉所得税の納期の特例の要件に該当しなくなった場合は、
「源泉所得税の納期の特例の要件に該当しなくなったことの届出書」を提出して、
原則通り毎月源泉税を納付しなければなりません。
年末調整をお忘れなく
ここまでご紹介してきた源泉税は、役員・従業員のいわば「仮の所得税」。
毎月の課税対象の給与と扶養している家族の人数で簡便的に計算した税額です。
役員・従業員の給料から天引きしていた所得税は、「年末調整」という手続きで確定額を計算します。
ほとんどのケースでは源泉徴収していた仮の税額のほうが大きいため、12月か1月に会社から還付(返金)を受けられます。
年末調整については、別の記事で詳しく解説します。
源泉税の納付が漏れていた&遅れた場合はどうなる?
源泉税を期限通りに納付できていないことに対する基本的な追加の税金は以下の2つです。
不納付加算税
源泉所得税を納付していないことに対する罰金的な税金です。
本来納付するべきだった税金額の10%がかかります。
ただし、税務署から指摘される前に自主的に納付した場合は、5%の負担で済みます。
なお、以下の場合はこの不納付加算税が免除されます。
①納付の意思はきちんとある。わざと遅らせたわけではない。
②遅れたけど、期限から1か月以内に納付している。
③過去1年間、納付に遅れはない。
④不納付加算税が5,000円未満
延滞税
税金を期限内に払わないと、利息的な意味合いの『延滞税』がかかります。
納付期限が2か月までは税率は高くありませんが、それを超えると倍以上の利率になります。
▶納付期限から2か月以内 年利7.3% or 「特例基準割合(注1)+1%」の低い方。
具体的には以下のとおりです。
- 令和3年1月1日から令和3年12月31日まで:年2.5%
- 平成31年1月1日から令和2年12月31日まで:年2.6%
- 平成30年1月1日から平成30年12月31日まで:年2.6%
- 平成29年1月1日から平成29年12月31日まで:年2.7%
▶納付期限から2か月超 年14.6%と「特例基準割合(注1)+7.3%」の低い方。
具体的には以下のとおりです。
- 令和3年1月1日から令和3年12月31日まで:年8.8%
- 平成31年1月1日から令和2年12月31日まで:年8.9%
- 平成30年1月1日から平成30年12月31日まで:年8.9%
- 平成29年1月1日から平成29年12月31日まで:年9.0%
カードローンほどとは行かなくても、けっこう高利でビックリですよね。
なお、ウソや不正行為で脱税をした場合などを除いて、修正申告書等を提出していれば、延滞税は最長1年分で済みます。
まとめ
今回は、役員報酬や従業員給与の支払いのときに天引きする『源泉(所得)税』について、計算・納付方法をご紹介しました。
源泉徴収が出来ていなかったり、税額が少なかった場合は追加の税金負担が発生してしまいます。
しっかり準備して漏れのないようにしておきましょう。
こんな悩みごとはありませんか?
- 担当者が毎年のように変わる
- 税理士が高圧的で意見交換できない
- 税理士から節税策など何の提案もない
- 試算表をタイムリーに出してくれない
- 試算表の説明を受けたことがない
- クラウド会計に対応していない
- ほとんど税理士が来てくれない
- 質問しても回答がない、嫌な顔をされる
- 現在の税理士が高齢でこの先が不安
税理士とのコミュニケーション不足は、記帳内容がぐちゃぐちゃになり、
誤った経理処理となる要因となります。
その結果、3~5年周期の税務調査において指摘の対象となり、
最大40%の追徴課税(追加で税金が取られてしまうこと)のリスクが高まります。
無駄な税金を払わないためには、常日頃、経理処理や経営環境などについて税理士と共有し、
追徴課税リスクへの対応策を早期に講じることが大切です。
岩沢将志税理士事務所では、経理内容のご相談はもちろん、
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