消費税の基本・簡易課税・還付・インボイス制度

こんにちは!東京・三軒茶屋の税理士の岩沢です。

「売上が1000万円を超えたら払い始める」と漠然と認識されることの多い『消費税』。

通常は創業から3年目以降に考え始めることの多い消費税ですが、

届出1枚で場合によっては何千万円もの有利・不利が生じうる税金です。

今回は、消費税のしくみと簡易課税制度、そして令和5年から始まるインボイス制度について主に解説します。

目次-Contents-

消費税のしくみ

あなたが会社や個人事業主として商売をしている方であれば、以下のような消費税のやり取りをしているはずです。

【販売時】販売価格に10%の消費税を上乗せして顧客に請求

②【購入時】購入価格に10%の消費税が上乗せされて支払い

 

①で顧客から受け取った消費税は、あなたのものではありません。

最終的に国や地方自治体に納めるので、単に顧客から「預かった消費税」です。

では預かった消費税はいつ納めるのでしょうか?

 

消費税はいつ払う?

通常、決算日から2か月以内に消費税の申告書を提出し、その結果に基づいて納税します。

 

払う消費税はいくら?

預かった消費税全額ではありません。

あなたが物やサービスを買った時点であなたは消費税を払っています。

消費税をもらった側(仕入先)はきちんと消費税を国などに納付している(はず)なので、

あなたが顧客から預かった消費税を丸ごと国などに納めてしまうと、

国などは重複して消費税を受け取ることになってしまいます。

そうならないよう、あなたが納めるべき消費税は以下のように計算します。

納付税額 =(預かった消費税)-(支払った消費税)

 

例を使って計算してみましょう。

例)売上:1000万円 仕入:400万円

預かった消費税:売上1000万円の10%である、100万円

支払った消費税:仕入400万円の10%である、40万円

納付税額:100万円-40万円=60万円

 

帳簿への細かい記載が必要です

あなたが国などに納める消費税の金額は、預かった消費税から支払った消費税を控除して計算することを紹介しました。

なお、支払った消費税を控除するには、会計帳簿への細かい記載と、レシート等の保存が必要です。

 

帳簿(仕訳)に書くこと

①仕入先の氏名・名称

②取引年月日

③取引内容

④取引金額

 

たまに仕訳の摘要欄に「接待」や「事務用品」としか書いていないものを見ますが、

これでは要件を満たさないので、お店の名前や品名・接待相手の名前を書くようにしましょう。

 

免税事業者ってなに?

消費税は、全員が支払わなければならないわけではありません。

一定の要件に該当する会社・個人事業主のみ、預かった消費税を国などに納める必要があります。

以下に該当すれば、『課税事業者』として、消費税を払う必要があります。(細かい要件は省略しています)

 

消費税を払う必要のある事業者

①2期前の売上高(※)が1000万円超

②資本金が1000万円超で、1・2会計期間

③前期の最初の半年で、売上高と人件費が両方とも1000万円超

 

※正確には「課税売上げ」ですが、ここでは細かく説明しません。

消費税がかからない取引もあるので、かかる売上等に限定しているのです。

⇒国税庁HP「No.6355 課税売上げと課税仕入れ」

 

①2期前の売上高(※)が1000万円超

第1期の売上高が1200万円であれば1000万円を超えているので、第3期は課税事業者となります。

なお第1期と2期は「2期前」がないので、課税事業者とはなりません。

創業から2年間は消費税を払わなくていい、と言われる理由です。

 

②資本金が1000万円超

通常は最初の2年間は消費税を払わなくていいのですが、

資本金が1000万円を超えていると、問答無用で課税事業者となってしまいます。

ただしこれは第1期と2期だけの判定です。

3期目以降は通常通り、①のように判定します。

 

③前期の最初の半年で、売上高と人件費が両方とも1000万円超

通常は最初の2年間は消費税を払わなくていいのですが、

もし1年目の最初の半年の売上高と人件費が両方とも1000万円を超えていたら、

2年目から課税事業者となります。

 

簡易課税制度ってなに?

上記の通り、納めるべき消費税の金額は預かった消費税から支払った消費税を控除して求めることを紹介しました。

ただし、2期前の課税売上高が5000万円以下であれば、簡単な計算方法で消費税を計算することが認められています。

※前の課税期間末日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出することが必要です。

⇒国税庁HP「No.6505 簡易課税制度」

この『簡易課税制度』では、売上高の一定の割合を仕入額とみなして、受け取った消費税から控除するしくみが採用されています。

これを「みなし仕入率」といい、業種ごとに決まっています。

たとえば卸売業であれば90%、不動産業では40%などです。

場合によっては、一般的な課税方法よりも簡易関税の方が税額が安くなるケースもあり得ます。

 

例)不動産業

  • 売上:1000万円
  • 経費:100万円

 

通常の消費税の計算方法

税務署に納めるべき消費税=預かった消費税(売上高1000万円×10%)-支払った消費税(100万円×10)=90万円

簡易課税による消費税の計算方法

税務署に納めるべき消費税=売上-(売上×みなし仕入率40%)×10%=60万円

簡易課税にすることで、30万円も消費税額が少なくなりました。

 

 

2年間は継続がマスト

この簡易課税制度は、中小企業の事務的な負担を減らすことを目的に導入されました。

しかし、通常の方法と簡易的な方法を事前に検討し、どちらか税額が安くなるほうを採用するのが実務になっています。

ただし、毎年コロコロ消費税の計算方法を変えることは許されておらず、

いったん簡易課税制度を選択した場合は、2年間は通常の課税方法に戻ることは出来ません。

2年経った後に通常の方法に戻す場合は、

その期が始まる前に「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を納税地の所轄税務署長に提出する必要があります。

 

消費税の還付を受けるには?

預かった消費税よりも支払った消費税の方が大きければ、

(余分に消費税を支払っていることになるので)消費税の還付を受けることが出来ます。

輸出には消費税がかからないので、輸出メインの会社であったり、

大きな設備を導入するなどして経費がかさんでしまったりした期は、消費税の還付を受けられるケースが多くなります。

ただし、消費税の還付を受けられるのは課税事業者に限られます。

2期前の売上高が1000万円以下であるなどの理由で免税事業者となっていたら、

いくら余分に消費税を支払っていたとしても還付は受けられません。

免税事業者が消費税の還付を受けるには、自ら課税事業者になることが必要です。

「消費税課税事業者選択届出書」を期が始まる前に税務署に提出することで課税事業者となることができ、

消費税の還付を受ける体制が整います。

⇒国税庁HP「消費税課税事業者選択届出手続]

 

2年間は継続がマスト

これも簡易課税制度と同様、2年しばりがあります。

自らの意思で課税事業者となった場合は、2年経ってからでないと免税事業者に戻ることは出来ません。

来年の仕入を多く見込んで消費税の還付を受けられるとしても、

再来年は売上がドカンと増えてしまって免税事業者のほうが良かった、なんてこともあります。

免税事業者が課税事業者となることを選択する場合は、事前によくシミュレーションしましょう。

 

インボイス制度とは?

令和5(2023)年10月から、『インボイス制度(適格請求書等保存方式)』がスタートします。

消費税は、「預かった消費税から支払った消費税を控除して計算する」ことをご紹介してきました。

 

『益税』をなくすため

通常、預かった消費税は国などに納める必要があります。

しかし、これまで見てきたように免税事業者はその預かった消費税を国などに納めなくていいのです。

懐にしまっています。違法ではありません。これを「益税」といいます。

消費税が3%→5%→10%と上がっていくにつれ、得をしている人も実はいるのです。

インボイス制度は、この益税を放置しないという態度の表れかもしれません。

 

何度もくどいですが、消費税は「預かった消費税から支払った消費税を控除して」計算します。

支払った消費税を控除していいのは、支払先がその分の消費税を国などに納めているとみなしているからです。

支払先が免税事業者であれば、その会社・人は国などに納めていません。

でもこれまでは、その分も納めるべき消費税から控除していいですよ、と認められていました。

 

しかし令和5年10月からは、

『適格請求書発行事業者』に支払った消費税でなければ、納めるべき消費税から控除することは認められなくなります。

 

【適格請求書発行事業者】

税務署に「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出し、登録を受けた事業者をいいます。

この登録を受けるには、課税事業者であることが必要です。

 

適格請求書発行事業者でなくても、これまで通り顧客に消費税を請求し、益税をもらっても違法ではありません。

ただし、適格請求書発行事業者でない人に消費税を払っても、その人は預かった消費税からその分を控除することが出来ません。

 

例)

  • 売上:1000万円
  • 適格請求書発行事業者でない人からの仕入:400万円

 

預かった消費税:売上1000万円の10%である、100万円

支払った消費税:仕入400万円の10%である、40万円

納付税額:100万円-40万円60万円 ⇒100万円

 

合計140万円の負担です。今までより40万円も多く消費税を負担することになってしまいます。

 

免税事業者のままだと、失注のおそれあり

上の例のように、免税事業者や適格請求書発行事業者でない人からの仕入でかかった消費税は控除することが出来ず、

二重に消費税を払うことになります(国などと仕入先の両方に払う)。

このような場合、普通はどうなるでしょうか?

適格請求書発行事業者でない人からの仕入を減らす(なくす)でしょう。

消費税が二重になってしまうんですから。

益税で得したい!と思って免税事業者のままでいても、

取引を失注して売上自体がなくなってしまっては元も子もありません。

インボイス制度が始まる令和5(2023)年10月以降、免税事業者による課税事業者登録がかなり増えるものと思われます。

 

適格請求書発行事業者の事前登録は令和3年10月1日から始まります。

インボイス制度については、別の記事で詳細に解説します。

 

まとめ

今回は、消費税のしくみと簡易課税制度、そして令和5年から始まるインボイス制度について主に解説しました。

自ら選択する制度によって、有利にも不利にも働く消費税の払い方のしくみ。

しっかり事前によく検討するようにしましょう。


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